Ricochet

音楽ものレビュー、雑談用のブログです。2019/2/24開始。

ボウイのベスト盤「レガシー」について

ボウイのベストについては、今までも様々な盤がリリースされてきたが、彼の他界後としては、この「レガシー」がはじめてのリリースとなる。というより、これをもって最終的な決定盤ベストとなるのだろうか。内容的には、ボウイファンであればどれもおなじみの、不世出の名曲、大ヒット曲が集められている。

しかし正直、このリリースに関して、ちょっとビミョーな気持ちもある。なぜなら、今から2年前の2014年、「ナッシング・ハズ・チェンジド」という、かなり充実したベスト盤が出ているからだ。今までのベスト盤にはない、最初期のデラム時代から、最終作、★の"Sue"の初期バージョンに至るまで、彼の生涯に渡るキャリアを包括する内容となっていたからだ。しかも、初CD化特典である"Let Me Sleep Beside You"と、"You Turn To Drive"が、なかなかいい曲なのだ。

そして、ナッシング~の編集は、時代的に新しく発表されたものから順番に収録し、21世紀→90年代→80年代→70年代→デビュー当時へと、時計の針を逆向きに遡っていく構成が優れている。単なるベスト盤というに留まらない、独特の編集観に貫かれているのだ。むろん、まだ存命だったボウイ本人の意思も、充分に反映されているであろう。アルバムを全部持っていても、あえてこっちをかけたくなる時もあるので。個人的にも、ボウイ他界直後は、彼の軌跡を振り返りたくなった時、このナッシング・ハズ・チェンジドを遺作★と共に、よく聴いていたものだ。

じつは内心、ボウイの他界後、ベスト盤は、ナッシング・ハズ・チェンジドを決定盤として欲しいな、他のレジェンド達のケースで残念ながら見受けられる、本人の意思の反映されないベストの乱発はやめて欲しいな、と思っていた。でもってそんな矢先、この「レガシー」がリリースとなった。

収録されている曲をチェックすると、大部分がナッシング~と重複している。ちょっとこれは、懸念の通り、似たようなベスト盤が混在し混乱を招くのでは?と思った。しかし、実際にレガシーを購入して、日本盤ライナーノートを読んでみると、どうやらベストはこちらを決定盤とし、ナッシング~をカタログから外すようだ。そうであれば、混乱は少なくなるだろうが、あれはカタログから外してしまうには、あまりにも惜しい内容なんである。

レガシー収録の特典としては、火星の生活2016ミックスというのはある。内容的には、ドラム等のリズムトラックを抜き、曲の骨子を浮き彫りにした内容だ。(リック・ウエイクマン2014来日公演で、リックがこの曲をソロピアノで披露したのを思い出しました) あとは、★の正規収録曲が反映されているというのはあるが、その位であれば、ナッシング~をマイナーチェンジして欲しかった、と思うんだなぁ。ライナーには、このベスト盤差し替えは、ボウイ本人の意思も込められているはずだ、という意味の記述があるが、個人的には、そうかなあ?という気がしてしまう(むろん、本当のところはわからない)。

あと、ナッシング~の収録曲で、レガシーでは抜けてしまった名曲も結構ある。特に、Diamond Dogs、Wild Is The Wind、Buddha of Suburbia、Strangers When We Meet、Love Is Lost Mixあたりは惜しい。最初期の"Can't Help Thinking About Me"あたりもイイよ。まあ、ナッシング~のCD3枚組とレガシーの2枚組の物理的な違いもあるから、仕方ないんだけれどね。

まあ、いずれにせよ、ボウイのベスト盤購入を考えている方には、まだ在庫があるうちに、ナッシング・ハズ・チェンジドの方をゲットしておくのをおすすめします。とくに、ボウイの曲は多少知っているが、もっと色々な時代のものに触れてみたい方には。まだボウイの曲を聴いたことがなく、これから体験してみたいという方は、最初はこのレガシーからでもいいのではないんでしょうか。

 

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