Ricochet

音楽ものレビュー、雑談用のブログです。2019/2/24開始。

エリアフ・インバル&都響のショスタコーヴィッチ4番CDと実演

音楽之友社による、2012年度 第50回「レコード・アカデミー賞」の「交響曲部門」賞を受賞した話題盤。

このインバル&都響によるショスタコーヴィチ交響曲4番ライヴ盤は、収録のあった東京文化会館の実演にも行きました。なんと、前売チケット完売ですよ!同じコンビによる、超有名曲な交響曲5番の実演でさえ、当日券が出ていたのに。一昔前ならマニアックな作品の印象があっただろう4番がこれほど人気とは、、、時代も変わったものです。

さて、個人的にインバル&都響による実演にこれまで何度か足を運び、その楽曲の明晰な構築性・構造性にこだわる解釈をたびたび体感してきました。ブルックナーの2番や6番のような、地味な印象を持たれがちな曲に、見事な光を照射し感嘆させられたこともありました。

このタコ4番も、かなりの難曲であろうに、都響の皆さんが実力を発揮した、実に見事な演奏でした。しかし、良くも悪くも明るい演奏だな、というのが個人的な感想です。それは特に実演よりも録音において顕著に感じられました。たとえば、この曲の初演指揮者であるコンドラシン盤のような、叩きつけるような戦闘性のようなものは、あまり感じられません。若き日のショスタコ先生が、まだソ連から顕著な政治的弾圧を受ける前に創作したこの4番の、破天荒な魅力はやや薄まっていると思います。

なんというか、この盤では4番よりも5番を聴いている感触にちょっと近いものが時たま出てくる。対極に見られる4番と5番の共通性をいくつか確認できた、という意味では収穫だったのですが。巨匠の発言を聞いてみても、この両曲にかなりの肯定的解釈を持たせようとしており、その辺が、4番ファンの方にとっては、評価がやや分かれるところかも知れませんね。しかし繰り返しますが、見事な演奏であったことは疑いもなく、一聴の価値は充分ある一枚だと思います。


最後に、話はちょっとズレますが、小泉和裕先生は、終身名誉指揮者をつとめる都響とのショスタコのシンフォニーとなると、このところ5番ばかり取り上げておられたようですが(このコンビの5番も好きですが)、そろそろ4番や10番を振って戴きたいです。もう時代的にも、充分それが受け入れられる状況になってきていると思いますので。

 

f:id:ricozeit:20190610131956j:image