2014年イエス「危機」「こわれもの」完全再現ライブ感想
11月25日 東京ドームシティホール。
イエスが、あの「こわれもの」と「危機」の2大傑作の完全再現ライヴを行うというので、ネットの情報を完全に遮断して、今回の公演に臨むことにしました。
メンバーが登場してきこえてくるのは、大自然の鳴動を思わせるイントロ・・・こわれものではなく、危機からのスタートだったので、ちょっと意外。
冒頭、メンバーのアンサンブルにどことなく緊迫感が不足していると感じる。この曲の題名の通り、限界ギリギリの切迫感で臨まないと、あの独特のリズム感が出ないんじゃなかろうか。
ジョン・デイヴィソンのヴォーカルは、この大曲に挑むには決定的にパンチ不足。ジョン・アンダーソンとは「一見」声質が似ているんだけど。そもそもキー自体がキツそうというのもあるが、アンダーソンの声の持つふくよかさや、全てを包み込む母性愛のような拡がり(笑)には欠けている。
スティーヴ・ハウとクリス・スクワイアの両御大のコンディションが良さそうなのが救いだが・・・ジェフ・ダウンズのキーボードは、音符上はリック・ウエイクマンをなぞっているようだけど、音色の選択がやっつけ仕事過ぎる。例えば、中間部のあのチャーチオルガン風のソロの音色を、ポリ6系のガリガリな音色で代用していたり。原曲の荘厳なイメージが台無し。ヴォーカルの問題は仕方ないとしても、こっちは努力次第でいくらでも改善できた筈。
おまけに、背景に写し出される映像が垢抜けない。近年のCGの進化で、往年の名曲が映像をバックにライヴ演奏される機会も増えた。しかし今回の危機の映像といったら、どっかのチープなヒーリング系絵画展にでも出てきそうな、安っぽい自然の映像やヨガのポーズやら、チャクラ人体図やらのシルエットやら。
近年の実例との対比でいえば、ボール・マッカートニーでもジェスロ・タルでも、ブラック・サバスでも、もっと原曲にマッチングする映像を作り込んできたぞ。想像だが、恐らくアンダーソンがいたら、この映像は許可しなかったと思う。
うーん、十代の頃に愛着を持って聴きこんだアルバムなので、どうしても辛口の見方になってしまうな(😟)。少しネットでの評判をリサーチしてみたら、わりと好評価の人達が多そうですが。
後半の「こわれもの」に入る前に新作「ヘヴン&アース」から二曲。これらは悪くなかった。デイヴィソンのヴォーカルも良かった。まあ、所謂プログレとは別物と思うが、素朴な歌ものとして聴けば、それなりに楽しめる。
さて、後半の「こわれもの」はどーかなーと思ったんですが、あにはからんや、実はこっちはなかなか良かったんです。ラウンドアバウトのアンサンブルはまずまずだし、デイヴィソンの声も悪くない。個人的な結論としては、現在のメンバー構成は、大曲に挑むには全体的なキャパシティが不足しているが、やや曲がコンパクト化すれば、なんとか聴くに耐えうるようになってくる、と。間違っても「海洋地形学の物語」になど挑戦しない方がいい(笑)。
映像も後半は悪くなかった。ラウンドアバウトでは、こわれもののジャケットで出てくる、あの地球の画像をCGで回転させたり変化させたり。次はブラームスの楽譜の映像だったり。「南の空」では、雪の世界の映像に「リレイヤー」の大蛇を登場させたり。ロジャー・ディーンの作品をうまくアレンジしていた。
デイヴィソンは「ウイー・ハブ・ヘヴン」はまずまずだったけれど、「南の空」のようなパワフルなナンバーでは、やはりスケールに乏しい。でも前半の危機よりは、全然聴ける。
アラン・ホワイトは、ブルーフォードのオリジナルの繊細さにはやや欠けるけれど、全体的に手堅く仕事していたという感じ。
スクワイアの「フィッシュ」、これは実に良かった!あの独特のブイブイと重たいベース音を自在に操り、ホワイトとのコンビネーションも見事で、場内大喝采!ここにきてやっと、往年のアンサンブル・マジックの一端を聴けたと思った。次いでハウの独壇場、スパニッシュな味わいの「ムード・フォー・ア・デイ」。この二曲を堪能できただけでも、来た甲斐があったかな。ラストの「燃える朝焼け」も盛り上がりましたね。
アンコールは、「オール・グッド・ピープル」と「ロンリーハート」。こういうコンパクトでポップな楽曲であれば、今回の来日メンバーでもなかなか楽しませてくれる。あまりアルバム完全再現とかにこだわらずに、今のメンバー構成に見合った曲目で勝負すれば、なかなか良いステージになると思います。
★ 2019/2/24追記
イエス・東京ドームシティ2019再来日公演の感想をアップしました。
↓↓
http://ricozeit.hateblo.jp/entry/2019/02/24/221424