Ricochet

音楽ものレビュー、雑談用のブログです。2019/2/24開始。

キャラバン来日公演

カンタベリー・ロックの雄、キャラバンの来日公演があるというので、川崎のクラブチッタに行ってきました。 

場内、座席券は完売で椅子は目一杯設置され、立ち見のお客さんもかなりいる。

 

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キャラバンといえば、ジャンル的には、いわゆる「カンタベリー・ミュージック」ということになるだろう。カンタベリーは、英国の東南部に位置する地方で、一度ぜひ訪れたいと思っている場所。カンタベリーのロックは、キャラバン以外ではソフトマシーン、ゴングなど、ジャズ的なセンスがベースにあるロックだが、どのアーティストもイマジネーションの豊かさがあり、遊び心が一杯で楽しい。さりげなく演奏しているようで、いつの間にか演奏がヒートアップするシーンも多々あり、柔らかなようでいてパッションに溢れている。個人的には、カンタベリーのシーンは「ひとつの国」に相当する多彩さがあって、「ジャーマン・ロック」や「イタリアン・ロック」にも匹敵する、ひとつの一大ジャンルだと捉えています。

 

キャラバンの唯一のオリジナル・メンバーとなったパイ・ヘイスティングは、以前のインタビューで、カンタベリーサウンドの特徴を「一番象徴しているのが、古い教会などで得られるダイナミックな反響音、アコースティックな響きを最大限に生かす幻想的なリヴァーヴ」だとコメントしている(ストレンジ・デイズカンタベリー・ミュージック特集号より)。

また、「僕自身はあまり声量がないから、歌が入るとバンドは全体の音量を落とさなければならなかった。それがインスト・パートになるとヴォリュームがぐっと上がる。そうして曲に自然に緩急、ダイナミズムが生まれたんだ。それが僕たちの個性になったんじゃないかな(今回の来日パンフレットより)」とも。そう、緩急のダイナミズムこそ、キャラバンの最大の魅力だと思う。

 

さて、本日は休憩ありの2部構成になるとのアナウンスあり。第1部のオープニングは、そんなキャラバンの魅力が最大に発揮された名盤”グレイとピンクの地”の、タイトル曲から。そして、このアルバムからの収録曲、”Golf Girl”、“Winter Wine”,”Love To Love
You”と演奏が続く。どうやらいきなり第一部で、このアルバム完全再現をやってしまうらしい!(曲順は少し違うが)。アルバム後半の大曲”9 Feet Underground”も、惜しみなく演奏された。

キャラバンは今回がライヴ初体験だけど、リーダーのパイ・ヘイスティングはかなり大柄な人で、コンディションは良さそうだ。原曲では、元メンバーのリチャード・シンクレアの歌っていた曲もヴォーカルを取っていたが、違和感は感じなかった。キーボードのヤン・シェルハース、ベースのジム・レヴァートンはオリジナルメンバーではないが、原曲の良さを損なわないプレイで大変好感が持てた。

バンドへの貢献度が非常に高いと感じるのは、ジェフリー・リチャードソン。ヴィオラをはじめ、リードパートを含むギター、フルート、スプーンに至るまで多彩なパートをこなしていた。

ドラムは、年代的には若いマーク・ウオーカーで、彼のエネルギッシュなドラミングがバンドのドライヴ感をいい感じに増すことに成功していたと思う。

休憩をはさんだ第二部も、かっての名曲がいくつか披露され、満足度は高かったと思う。ただひとつ残念だったのは、現時点での最新作である”Paradise Filter(2013)を来日前に購入、予習しようと思ったのだが、既に日本では廃盤状態で入手できなかったこと。発売時にちゃんとゲットしておけば良かったのだが、今は店舗、通販系とも入手は困難の模様。会場物販でアーティスト持ち込みのCDがあったので、ここでやっと購入できた。後で聴いてみると、ロックテイスト溢れるなかなかいいアルバムだった。