Ricochet

音楽ものレビュー、雑談用のブログです。2019/2/24開始。

アレア& アルティ・エ・メスティエリ来日公演

イタリアン・ジャズロックの重鎮、”アレア“と”アルティ・エ・メスティエリ”の饗宴という、非常に豪華な公演。川崎クラブチッタでは、いわゆるプログレ系の様々なアーティストを継続して招聘し続けていて、ありがたい限り。

 

アレアの過去の来日公演は、2013年チッタでのマウロ・パガーニが対バンの公演、同年のニュー・トロルスと対バン公演の両方とも行っている。もちろん、往年のカリスマ・ヴォーカリストであるデメトリオ・ストラトスはこの世にいないが、パトリッツィオ・ファリゼッリら超テクニシャン達の気迫の込められたアンサンブルは、ヴォーカル不在のハンディを感じさせなかった。というよりは、ストラトスの精神が、いまだにバンドに宿っていることを充分に体感できるものだった。


アルティ・エ・メスティエリは過去数度来日しているが、ライヴは今回がはじめて。これまた超テクニシャンの集まりだが、イタリアン・ロックならではの独特のエモーショナルな感性が光っている。

出演順はアルティから。ドラマーのフリオ・キリコの、御年67とは思えない若々しさにはおどろく。肉体も相当節制して鍛錬しているのではなかろうか。メチャクチャ巧いけれど、要所要所で、パッションが盛り上がってアンサンブルを煽り立てる。タイプは違うけれど、あのジェイミー・ミューアをすら、ちょっと連想させるところがあった。

 
まあジャズロックとの境界もビミョーなところだけど、個人的には、フュージョンプログレ系の音はあまり好みではない。実名は出さないけれど、うまいけど、だから何?って思ってしまうケースもあったが、彼らは別物だと思う。

 

休憩をはさんで第二部のアレア。今回の来日での最大の変化は、女性ヴォーカリスト・クラウディア・テリーニが加入したことだろう。すでに6年前の来日で、ヴォーカルなしでも充分な存在感を見せつけていたところに、ストラトスの後釜が加入するというのは、かなりのチャレンジだったのではないかと思う。
彼女はソウルフルでパウフルなヴォーカルを聴かせてくれたと思う。ほの暗くダークな持ち味も感じられる。ストラトスのような狂気的な凄みや変幻自在さに欠けるのは仕方ないが、アレアの名曲に、新しい息吹をもたらすことに成功したのではないか。

 
それにしても、パトリッツィオ・ファリゼッリの鍵盤は驚異的。巧いのももちろんだが、バグパイプやサックスの音色を使って、生楽器での演奏に引けをとらない臨場感を出していた。キーボードでこれができる人は稀有だと思う。どうしても、人工くささが出てしまいがちなので。


アンコールでは、アルティのメンバーがステージに戻ってきて、アレアと共演。まずはジミヘンの”The Wind Crys Mary”だが、こういうカバーをやっても、フリオとパトリッツィオの存在感は頭抜けていた。
続いては、フランクザッパ”King Kong”のジャン・リュック・ポンティ変奏バージョン。原曲がリリースされた60年代末の時点で、これほど高度なジャズロックが演奏されていたのも驚きだが、この夜の演奏の盛り上がりもこれまた驚いた。お祭りセッション的なノリで終わるかなと不謹慎な予想を立ててしまったのだが、とんでもない!素晴らしいセッションだった。各メンバーそれぞれの見せ場もあり、大団円で、合計4時間の長丁場を終了。お見事!

 

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